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希望の光

2016.03.17

普段は明確なテーマを決めてスナップ撮影をしない私だが、この日は特別だった。理由は写真でソレを伝えたい友人がいたから…
日没前、何となく決めた目的地に到着した私は必死でソレを探した。テーマは「希望の光」。
夕方と夜の中間的な時間帯、秒単位で見える景色は変化していく。私は僅かに残る光の方へと海岸沿いを歩いていった。五感を研ぎ澄ませ、何とかソレ感じようとしたが、ソレは全然見つからない。世界は容赦なく暗さを濃くしていく。残された時間は殆どない。気付くと私は海岸の端まで行き着いていた。もはや後方に光はない。私は前方にある海をひたすら撮った。しかし、その風景はソレを感じさせるようなモノではなかった。

集中力が切れかけた私はフト斜め上の方へと視界を向けた。そこには釣りを楽しむ中年男性の姿が在った。私はこの男性をフォーカスする事に賭けた。彼は私の存在に気付いてはいたが、心情を察してくれたのか、何も喋らず自然体でいた。私も黙って彼の動きと呼吸に全神経を注ぎ込んだ。釣竿を持ち、ただ立って待っている姿からは希望は感じられない…
私は集中力を切らさず何かが起きるのを待った。そしてその瞬間が訪れる…
釣竿から糸を引き、しゃがみ込んだ彼は、僅かに残された自然光を頼りに釣具の中から何かを探しだした。その様からソレを強烈に感じた私は強い気持ちでシャッターを押した。心が納得したのか、私は大きく息を吐き出した。そして彼に話しかけ、事情を話し、収めた写真を見せた。私が「有り難う御座いました」と礼を言うと、彼は「此方こそ有り難う」と言ってくれた。彼とはそれ以上は何も話さず、私は来た道を戻って歩きだした。前方に見える夜の風景と生温い風が妙に心地よく感じた。

希望の光-Atsuhiro-Okada

Camera:Leica M9-P
lens:Summilux 50mm F1.4 Nr.1928141
1/8 sec、ISO-80
© Atsuhiro Okada

この記事を書いた人

写真家

岡田 充弘

写真家、一枚の写真から時間と距離、その先にあるナニカを連想させる表現を目指し、風景を中心に様々な瞬間を切り取る。みかわワンダーランドの編集にも携わっている。

http://mikapon.net/gallery/